かつて、わが国の家庭は三世代(あるいはそれ以上)
によって構成され、食卓は家族揃って囲むのが習慣になっていました。その中で、
年配者によって日本の伝統に基づく優れた食文化が受け継がれてきていました。 ところが、
終戦後は核家族化によって伝統の食文化が伝わらなくなりました。
最初はアメリカ占領軍、その後は保健所・教育委員会・マスコミなどによる
経済性優先の食の欧米化が急激に進捗しました。 小児科医の立場からみるとき、
この食の欧米化によって国民に膨大な健康被害が及び、
医療費の信じられないほどの高騰を招いているものと断ぜざるを得ません。 おそきに失してはいますけれど、
さすがに日本政府も食の欧米化に歯止めをかけるために、
食育などにも言及するようになりました。 しかしながら、
現在政府が提唱している食育は、国民の健康よりも大企業や似非栄養学者たちの利潤を優先しているために、終戦前の本来の食育からは大きくかけ離れているのが実態です。 今にして、
伝統の食文化に則った食育を取り戻さなければ、
二十一世紀を担う子どもたちの未来を守ることは不可能であろうと考えます。 われわれの仲間である四千種類を超える哺乳動物は、すべて、地球上に発生した時点の土地に住み、その土地でえられる食べものだけを食べつづけています。つまり、自分の住んでいる土地の食べものを食べることが食の原点なのです。
ヒトの場合は、現在住んでいるそれぞれの土地でとれる食べものを口にすることが健康を保つ上で必須条件になります。 そうした観点に立つ時、日本に住んでいるヒト(北海道を除く)にとって望ましい食べものの素材は、
こめ・豆・いも・野菜・海草・果物・魚介類などになります。
終戦前の食卓はそうしたものばかりで占められていました。
食べものは、植物性食品・動物性食品を問わず、本来は生きものであり、それを
加工すべきではないのです。
食料自給率が著しく低下してしまった現状にあって、ある程度、
加工食品も口にせざるをえませんが、極力さけるようにすべきです。 以上のような点をふまえて、
少しでも食の原点を見直し、
健康を保っていただきたいものと願っております。 |