いささか旧聞になりますが、
東京都のある保健所に勤務する医師と語り合ったときの事をお伝えします。
彼は三年間に渡るアメリカの保健施設での研修を終えて帰国したところでした。 アメリカで彼が一番驚いたのは、
乳幼児に与える牛乳に関する日米間の見解の相違でした。
アメリカの保健施設では
「乳幼児にはなるべく牛乳を与えないように」
「妊婦及び授乳中の母親は牛乳や乳製品をとらないように」
と指導しているといいます。 ひるがえてわが国では、
保健所・教育委員会・大学病院などで、
いまだに乳幼児に対して大量の牛乳や粉ミルクなどを与える指導が行われています。 牛乳を飲みつづけている最近の子どもや若者は、たしかに体格は大きくなりました。その反面、
明らかに体質が劣化し、生活習慣病・アレルギー疾患・心のかたよりなどの増加および低年齢化を招き、
日本の総医療費激増の大きな要因となっています。 その辺の事情を、
山梨県綱原村で診療に従事している古守豊甫(こもりとよすけ)さんは、
一九四八年からの厚生行政の失態と断じています。 古守さんは
「現代栄養学の推進は、まさしく行政や企業の犯した大罪である。
しかも、我々の税金でそのような罪を犯している。何としても償ってもらわなければならない」とし、
さらに「日本古来の正しい食文化を遵守してきた明治
・大正生まれの人がいなくなったら日本人の平均寿命はガタンと落ちるのではないか」と警告しています。
五十年余り小児科診療に当たってきた私も全く同じ感触を持っています。 冒頭の医師は就学前の子どもを二人持っていました。
対談の最後に、彼はポツリとこう洩らしました。「でも、保健所内では牛乳が子どもに悪いなどとは口が割けてもいえません。
私にも家族の生活がかかっておりますからね」 |