元国立予防衛生研究所室長の山田千晶さんの著書に「タバコ発がん説の
うそ」があります。肺がんに関してもっとも知りうる立場にある方の本
だけに説得力があります。
退職後に出版されたのは、現職中ですと職を失う恐れがあったからなの
です。
山田さんの主張は、厚生省が肺がんを惹き起こす可能性のもっとも高い
ものを隠蔽するために、それに比べればはるかに可能性の少ないタバコ
を犯人に仕立て上げたというものです。そのために、学会以前に、新聞や
テレビで報道されたものが国民の頭の中に組み込まれて、タバコには発
がん性があり、しかも周りにいる者にもその影響が及ぶと思い込まされ
ているのです。
こうして、大気汚染による健康被害から国民の目をそらすことができれ
ば、研究費を出したくなる企業も出てくるでしょうし、自動車産業を基
幹とした現代社会にとっても喜ばしい結果を招きます。
山田さんは「タバコ肺がん説という暴論に対して堂々と反論できない
タバコ業界は、自動車産業からしばらくの間反論しないようにリベート
をもらっているのかと疑いたくもなる」とまで記しています。
冷静に考えても、室内で吸う一本のタバコの煙と、交差点で信号待ち
をしている間に吸い込む自動車の排気ガスと、どちらが健康面に悪影響
を及ぼすかは明白でしょう。日本環境変異原学会評議員の西岡一さんは
「信号待ちの間は、全ての車が通り過ぎるまで息を止めているように」と
言っています。
人の健康を保つ上でもっとも大切なものは空気と水です。その空気を
汚染する大きな要因に自動車の排気ガスがあります。そうはいっても、現
代社会生活の中で自動車の必要性を否定することはできないでしょう。
とすれば、せめて不急不要の乗車を厳に慎むことで、悪化し続けている
大気汚染から身を守っていただきたいものです。 |